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天烏由貴のマイペースな創作ブログ。
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2009/03/17 (Tue)                  中華神仙演技~第一章~ (壱)
全てはここから。


火の神・祝融(しゅくゆう)と水の神・共工(きょうこう)の戦い。



 雄大なる地には大きな大河が流れ、悠々と数多くの山が(そび)える。
 鳳凰(ほうおう)は歌い舞い、麒麟(きりん)は踊り走る。
 穢れのない、純粋にして静かな無垢の世界。
 神聖さを醸し出す、その大いなる神秘はその景色にありのまま映し出す。
 遙か昔、そんな夢ような大地が広がっていた。
 まだ、神の御子である『人』は『神』によって創られたばかりであり、知恵も欲も備わっていなかった。
人間の理想的姿がまだあった時代、数多くの『神』が息づき、『人』と『神』が共に生きていた。
 未熟が故の理想境。
 『人』は『神』からの自立という欲と見、聞き、感じ、考えて見につけた知恵さえなければ今でもこのような世界は続いていただろう。
 だが、全て誰かの思い通りに上手く行く世界はありはしない。
 あるのだとすれば、それは小さな箱庭だけの世界だろう。
 これは、遠い、誰にもいつの事なのか計る事すら難しい遠い時の話である。
 
     一
 
 黒の衣を纏い、紅い長髪を持つ水神・共工(きょうこう)は山の頂にいた。
 ゆっくりと目を閉じると、風が流れ、紅い髪が揺れる。
 髪で隠れていた顔には両頬に縦線の長い十字の黒い印が刻まれており、髪と同じく紅い目を持っていた。
 ふと腰に携えていた剣を手に取り、前を指し示す。
 その先には別の神が共工と対峙するように山の頂に立っていた。
 赤い衣に少し後ろで結った黒髪を持ち、傍らに二頭の竜、双竜を従えている祝融(しゅくゆう)という火の神、共工の父だった。
 その手には大きな太刀を持ち、息子・共工に対するその黒い目はとても冷たく、見下すように細めていた。
「何しにきた」
 共工は嫌なものを見ているかのように睨んだ。
「大神・女媧に反乱を起こすと聞いた」
 祝融はそう言った。
「お前、今からすることがどういう事か、わかっているのか」
 低く、怒りの篭った声だった。
 女媧は初めて神に近い存在である『人』を創造し、今天帝という神の最高位の玉座に座り、世界を治めている女神のことである。
 世界の主体を担っている神に身の危険が及ぶとなれば、平穏が乱れるのは目に見えている。
 それを本当に共工がするというのならば、いくら相手が息子でも許しがたかった。
 祝融は無意識のうちに熱を発させ、周囲の空気が赤々と色づく。
自身の怒りがどれほどのものかを物語っているようだった。
「そんなの知らないな。俺は天帝の玉座に座り、天下を手に入れる。あの女神は木から多くのものを創造した。なら、俺は力であらゆる水を操り、女媧に代わって全てを制す」
 対して、共工は鼻で笑い、何ともないような顔をした。
 不敵な笑みを浮かべ、祝融を見る。
「覇者では気が済まないのか」
 祝融は言った。
 共工は知謀に優れ、また刑罰を好んで行ったことで争いを続けていた人間を封じ、中国九州全土を支配する覇者だった。
 確かにそれは偉大であり、勇敢な存在として扱われた。
だが、あくまでも世界を治め、守っているのは女媧であり、それは決して変えられないものだった。
 その為、共工の(おこな)ったことは女媧の手助けとして扱われた
更に、息子の偉業に父は何も言わずただただ従順に女媧の元にいることも共工にとっては許せないことだった。
それは出来て当然であるかのように、共工を認める者は誰もいなかった。
「まだ上があるのなら、上を目指すまでだ」
 共工がそこまでして女媧を倒すことにこだわっているのは誰かに認めて欲しい、という名誉心からだったのかもしれない。
「お前では無理だ」
「何故そう言える」
 共工が剣を真下に突き刺す。
 すると、剣が刺さった所から山に大きくひびが入り、やがてその山は崩れ落ちた。
 その山の岩が大きな音を立てて落下していく。
 共工は上手くかわしてき、岩が全て落ちるとその岩の山に立った。
「俺は力で人間達の戦を鎮めた。それだけじゃない。善悪を知らしめるために法を作り、刑罰を作った。間違っていることは何一つしていないはずなのに、何が違うんだ!」
 声を荒げて共工は、祝融に向かって叫んだ。
 だが、祝融は
「力だけが全てじゃない」
 と、静かに言った。
「王は道徳を以って天下を率いる者だ。それを決めるのは己ではなく、天命だ」
「何が天命だ!」
 声を荒げて共工は叫んだ。
 そもそも『天命』とは何なのか、共工には全くわからなかった。
 その字は天から授かった宿命、と書くが、その『天』とは一体何処なのか。
 『天』とは天空の事なのか。
ならば、何故何も語りかけず、ただ見下ろす事しかしない空が宿命を決めるのだろうか。
 世界と秩序を、無から有を生み出しているのは我ら神々のはずなのに、まるで神よりもまだ上の存在がいるかのような、そんな感じを味あわせる言葉であった。
 未だ何が起こるかもわからない、誰も知らない自分の事を何故他者によって定められてしまうのか。
 それも『天』の決めた事なのだろうか。
 肝心な所は好き勝手に決めて、後は神に放置させるような形で任せてばかり。
だが、そんな事を気にも止めず、世界の創造を行う神はその上の存在を誰も知らない。
共工はかつていろいろと考えを巡らせた事がある。
 世界は、神は、誰によって形創られたのだろうか、と。
 気がつけば、自分という存在は生まれ、自分が望んでいたかのようにありとあらゆる物事を成して来た。
 それはしなくてはならない、という使命感または責任感から起こるものだと思っていたが、やがてこれは自分の行ったことだろうか、自分がしたかった事なのだろうか、と様々な事を考えさせられた。
あまりにも自分のやる事が上手く行き過ぎて、ついには今までしてきた事は誰かによって動かされていたのではないか、と思ってしまった。
恐怖に怯えた。
 神の上により遙か尊い存在がいるのではないか、と感じたその瞬間。
 共工は『天命』というものを信じなかった。
 信じられなかったのだ。
「我が子ながら呆れる」
 と、祝融は溜め息を吐くと双竜の背に(またが)り、双竜は祝融の手綱によって山の上を飛んだ
 太刀を持ち替え、大きく円を描くように回し出す。
 それはやがて、炎の輪を作り出し、祝融が回せば回すほど大きさを拡大させていった。
「力ずくか」
 共工はそう小さく呟くと、
「来い、黒竜」
と、言うと共工から黒い霧が湧き上り、それはやがて大きい黒い竜を作り出した。
自分の魂から創った分身である。
その証拠にさっきまで共工の両頬にあった十字の印の横線がなくなり、その横線が黒竜の目元にある。
紅い(たてがみ)に、黒い鱗を持つ竜で黒竜は霧から出たと思えば、すぐさま共工に寄り添った。
共工は優しく黒竜の頬を撫でると、黒竜の頭上へ飛び乗った。
「行くぞ、女媧を() る前にまずは親父からだ」
 

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天烏 由貴
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大学生
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読書・音楽観賞・創作
自己紹介:
のんびりマイペースな奈良の人。
日本、中国の古代文学に興味あり。
血液型・星座は見事雷蔵と一致している。
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